伝言板2012年3月号
亡き父とお漬物
「あなたが台所に立つなんてどういうかぜの吹き回し?」
先日、我が家の台所で漬物を漬けていると…それは母の声でした。もの珍しい光景に驚いたようです(笑)
今テレビや雑誌で連日話題になっている野菜や肉の旨みを引き出す塩麹。
実はこの麹菌というのは、古来より伝わる伝統食品。お味噌の主原料がまさに麹なんです。
ご存知のように古くから日本人は大豆をそのまま食べるよりも、味噌、醤油のように乳酸菌を醗酵させて食べる習慣がありました。
この醗酵食品で代表的なものと言えば、なんといってもお漬物です。
さっそく自分が漬けた、お漬物を食卓に出すと母は、
「息子の漬物を食べられるなんて…そんな日が来るなんて夢にも思わなかったわ」
と少し高い声で嬉しそうに箸を伸ばしていました。
やっぱり自家製の漬物が一番とつくづく感じましたが、実はこの漬物とサンライフには切っても切れない…苦い思い出がありました。
それは、今から20年以上も前の話です
「よそで漬物なんて絶対食べるな!漬物ほど、添加物が入っているものはないのだから…」
小学生くらいの頃、よく父が言っていたのが今でも印象に残っています。
そんな父が、塩の害を取り除いた塩、極楽塩と出逢い感じたことは、
「この塩で漬けた白菜の塩漬けなんてたまんないだろうな!」
極楽塩を使った無添加の漬物を普及させるべく父は、なんと平成元年、漬物工場を立ち上げてしまいました!
しかし、漬物作りというのがいかに、大変だということを直後に思い知りました。
市販の漬物と同じ価格にするには
中国産の野菜や、国産でも市場で売れ残ったような野菜を原料にし、次亜塩素酸につけてピカピカにし、きちんと発酵させるのには時間と手間がかかるので、ソルビットなどの合成保存料で賞味期限を引き延ばし、更にそれではとてもまずくて食べられないので、グルタミン酸ナトリウムやタンパク加水分解質などの合成調味料で旨みをだすという始末でした…
…なにしろ常温で棚に並んでいる漬物というのは、法律によって加熱殺菌が義務化されています。その為、本来漬物に多く含まれている乳酸菌が死滅してしまうのです。
良い菌、悪い菌にかかわらず、国の基準では菌に対しては厳しいのです。
今のように食の安全性よりも経済成長優先の時代でしたから、無添加の漬物の良さも世間には、理解されず…父が立ち上げた無添加の漬物工場も、わずか一年足らずで倒産してしまいました。
(こちらについては社長の小冊子にも書かれていますので…)
父の情熱の証
それでも父は漬物に対する情熱を失わずに、想いをこめて作ったのが極楽梅干しです!
あの昔ながらの酸っぱい梅干しの味わいは、父の漬物への愛情表現なんだろうなと考えると今でも頭が下がる思いです。
その甲斐あって、今でも極楽梅干しは作り続けられています。
お漬物は家庭…おふくろの味
お漬物はやっぱり家庭で作ることが、一番良いのだと思っています。
自家製の漬物を漬けると、同じ材料でつくっても、各家庭でそれぞれの味が変わります。
それは、きっと菌が生きているからだとおもいます。生きた菌は、作る人の想いが反映するのだとしたら…
ご両親、旦那さまへの感謝の気持ち、お子さんの元気な姿をイメージして、心を込めて漬ける時の漬物には、その菌の中に愛情というスパイスが入るのかも知れません。
お正月やお盆、遠く暮らしている子供たちが、帰省したとき、何よりも楽しみなのが、おふくろの味。
目の前にしては云えないけど…
お母さん!本当に有難うございます。
店長 林 尚
